Research
研究に関する技量
分野横断的研究を実施するために、流体そのものや生物行動の計測・解析など様々な技量が必要である。ここでは研究に使用している測定技術や解析方法などを紹介している。
流れの測定・解析
粒子画像流速測定法(PIV)
粒子で満たした流体にレーザーシートを照射することで、粒子の動きを可視化する。粒子の動きをハイスピードカメラでとらえて解析することで、2次元で流速を測定することができる。回流水槽を使った実験室実験で使用されることが多い。
ADV・ADCPによる流速測定
ADV・ADCPは共に音波のドップラー効果を応用して流速を測定する機器である。超音波ドップラー流速計(ADV)は小さい領域の流速を高周波数で測定することができ、超音波ドップラー多層流向流速計(ADCP)はその名の通り多層で(多くの場合深度方向で)流速を計測することができる。回流水槽実験にも使用されるが、主に河川や海で使用される。
流れの解析
得られた流速を使い、乱流パラメーターなどを解析する。測定法によって最適な解析方法が異なり、フーリエ変換でのスペクトル解析など複雑な時系列データ解析法が要求される。
行動の測定・解析
画像データによる行動追跡
現在の研究では生物のサイズなどの理由から行動の追跡を画像データをベースに実施している。ディープラーニングを利用して標識なしで体の特徴点を追跡するPythonパッケージ(DeepLabCut)を使用し、自動追跡を行っている。
行動の3次元再構成
複数のカメラにおける行動追跡の情報とカメラのキャリブレーション情報を得られると、DLT法(Direct linear transformation)によって行動を3次元に再構成することができる。これによって、3次元での定量的な行動解析が実施可能になる。
行動解析
生物のどの行動をどのように解析するかは目的によって様々である。現在の研究では上述の3次元データを使って加速度や特定の動作の距離や速度などを算出している。また、光条件やカメラの性質を熟考することでプランクトンと魚の動きの両方を映像で捉えることにも成功しており、双方の動きの解析が可能である。
代謝測定
獲得エネルギーの測定
ある特定の条件下で、時間あたりにどれくらいの餌を食べたかを示す摂食率を調べる。すると、その餌に含まれるエネルギーや捕食者の代謝効率などの情報をもとに、摂食で得られるエネルギーを算出することができる。研究ではカメラで餌が魚の口に入る瞬間を捉え、その数を数えて摂食率を算出するという斬新な方法を取っている。
消費エネルギー
ある特定の条件下で酸素消費量を調べることで、生命活動の維持に最低限必要な基礎代謝量を推定することができる。研究では回流水槽を使い、酸素センサーで酸素濃度を計測することで、酸素消費量を推定している。
その他の技量
上述のような現在の研究で利用している技量のほか、過去の研究で利用した技量を紹介する
CNNによるスペクトログラム識別
深層学習の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)を使った画像認識プログラムを作成した。ネットワークを学習させることで、膨大な量のスペクトログラム(音声データを周波数スペクトル解析したもの、声紋ともいう)を画像データとして投入からある特定の生物種の音声が発生した部分を自動で取り出すことに成功した。
分子生物学的技量
遺伝子やタンパク質を扱う研究を実施するために基礎的な手法である。遺伝子クローニング、大腸菌や動物細胞での遺伝子発現と発現タンパク質評価(SDS-PAGE, ウェスタンブロッティング、細胞増殖率を通したタンパク質活性評価等)、qRT-PCR、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使ったタンパク質精製、質量分析計を使ったプロテオミクスなど。
組織・細胞学的技量
生体、組織、細胞を扱う研究を実施するために基礎的な手法である。組織切片作成、組織染色、免疫蛍光染色、細胞培養、フローサイトメトリーなど。